第7話 検査とその後の選択肢


【私とこーじの300日】

第7話

🔴【心配と空腹と】
🟡【検査結果を聞き、検索しまくる私•••】
🔵【1つの選択肢と、他に気になる事】


🔴【心配と空腹と】

これからの方針を
決めるための検査の日がきた。


こうじは
ふらふらとした足つきで
検査室へ入っていった。

 

命に関わる
大きな手術をするわけでもないけど

初めてのことなので、私は

ちゃんと無事に帰ってきてな!

と強く祈っていた。

 

 

検査の結果が出るまで
だいぶ時間がかかるみたいだったので、
病院内にあるレストランで
昼食を食べてみることにした。

 

めっちゃ心配やけど、お腹は減るんだなぁ

トンカツ定食や、カツカレー、
エビフライ定食、
ハンバーグ定食など、
美味しそうというか、
ギラギラしたものに感じた。

今のこうじだったら
食べられそうにないものばかりだなあ

と思って眺めていた。

こういう味の濃い食事は
こうじが退院してから、一緒に食べよっと!

そう思う自分がいた。

いたのだが。
気が付いたら
美味しそうな白身魚フライ定食を頼んでいたのだった。

ははっ•••
ちゃっかり美味しそうなもの頼んじゃった•••。
さすがアホな自分や

自己中心スタイルで
35年間生きてきたので、
無意識に自分を優先してしまう事に、
ため息と呆れた笑いが出た。

🟡【検査結果を聞き、検索しまくる】

数時間後
検査の結果が出て、
担当の医師や相談医のKさんと打ち合わせをした。

 

どうやら、
肝臓の主な腫瘍は、
肝臓の入り口付近にあるようで、
「肝動注」(かんどうちゅう)という処置をしてみようか、と仰った。

 

”処置”とおっしゃったが、”手術”の部類に入るそうだ。

”手術”という言葉が
初めて身近に飛び込んできて
緊張するなぁ•••

肝臓全体に処置をするのではなく、
入り口付近なので、
そのがん細胞へ
ピンポイントに届く処置だそうだ。

 

私は咄嗟に携帯で検索をする。
ちなみにもうこれから
ずっとこのスタイルである。

 

他にも色々がん治療はあるようで、
広範囲にラジオ波という高周波を当てるものや、点滴等で全身に行き渡らせるタイプや、放射線治療というものなど、沢山の検索結果があった。

 

その中に医師が言った
「肝動注」というのはあんまり出てこなかった。
(経験したことがある人の感想とかを知りたかったのに•••)

 

きっと、
一般的によく広まっている治療法ではなく、
こうじの状態に合わせた
特別な処置なんだろうと感じた。

先生、
それについて調べても
あんまり出てきませんけど•••?

と私が言うと、
医師達がわかりやすく絵に書いたり、
身体のどこを切るのか、
どのくらい切開するのか、
どんな種類の抗がん剤を流し込むのか•••


よーく教えてくれた。

 

M医師

肝臓の入口にあたる、足の付け根付近を1〜2センチほど切って、肝臓へ続いている動脈に抗がん剤を流す処置です。点滴治療に近い感覚です。手術という位置付けになりますが、切るのは数センチだけですよ。

 

そう言って、医師が
どこを切るかのイラストを指差してくれた。

 

 

私の心の中は複雑だった。

おおっ?!足の付け根って言ってるけど、
ほぼ、こ、股間やん?
こんなデリケートなところ、
こうじ、絶対嫌がるんちゃうん•••。

そこらへんはちょっと勘弁してあげてー!

こうじを見ると、
冷静を保つ表情をしている

こーじ

•••。

(うわ〜そこ切るんっすか、って私には聞こえる•••!)

 

こーじ

ほ、他の選択肢も、
あることは、あるんですか?

 

M医師

例えば?

私の肝臓を、いっこあげる、
とかそういうやつ?

 

M医師

んー•••。
出来ない事ないんですけとね、
まずやらないというか、しないほうがいいというか、やってみても同じかも知れません。

 

移植?ってゆうのをしても、
また再発してしまうかも
って事ですか?

 

M医師

そうですね、こうじさんの肝臓そのものを健康なものに取り替えたとしても、腫瘍の大元は入り口付近にあるので、結局血液はそこを通ってまた肝臓内へ流れてくるので、再発の可能性が高いと思われますね。

 

こーじ

でも、選択肢として、移植とか
”他にも可能性がある”
と言えますか?

 

M医師

いえ、
私達医師チームでの話し合いではこの『肝動注』1択ですね。

 

Kさん

あくまで私達の病院で、この選択を提案するって言うだけなのよ、
もちろん、他の病院で相談もできるのよ!

それは自由に決められるからねっ!
それをセカンドオピニオンって言うの。

 

私とこうじは、
たくさんの選択肢の中から
一つを選ぶものかと思っていた。

 

大切なこうじには
一つの選択肢しか無いなんて•••
と少し落ち込んだ。

 

🔵【1つの選択肢と、他に気になる事】

こーじ

まあ、裏を返せば、
1つ選択肢があるだけマシ
という事かもしらんな

それやったら、•••それ、やるしかないな

こーじ

やらないという選択肢は無いもんな。

それに賭けてみようか!

私とこうじで意見が一致した。嬉しかった。

 

それに、
Kさんの言っていた
〝セカンドオピニオン〟も気になった。

そのワードは
ドラマの世界でしか聞いたことがなかった。

 

自分達には
縁のない事だったのに、
目の前に来ている事に驚いていた。

 

病院側が出した治療方針を
自由に決めれるって、
特別な事なのかな?
みんなやってるのかな•••。

明日、相談医のKさんに
それやってみてもいいっすか?的な
軽いノリで、
私から聞いてみよか?

こーじ

うん•••

•••??

こーじ

色々聞いてみて•••。

こうじをよーく観察すると、
なんとなく遠慮がちな態度だった。

 

気を遣ってる匂いがプンプンする。
なんとか感じ取れた!

いつもの私だったら確実に見逃してる。

どしたんやっ

こーじ

•••いいん?

なにがやっ

こーじ

移植とか•••

ん?”私の肝臓を一個あげる〜”の話?
そんなん!
2個もあるねんから、
1個ぐらいええに決まってるやん!

(アホな私は、この時まだ肝臓は1つしかない事に気がついていない•••。肺と勘違いしていたと思う。)

検索したもん!
片方の臓器が無くなったぐらいでは
死につながりませんって
書いてたもん!

こーじ

フッ•••。最近検索すんの好きやな

たまにウソ情報もあるから、
めっちゃ注意して検索してるで、
安心してな。

こーじ

ほほう•••

ほほう って、
なんかクールにしてますけど•••


処置の説明聞いた時、
股の近くを切開するかもしらんから
内心メッチャ嫌やったやろ(笑)

こーじ

マタじゃありません

あ、し、の、付け根!

言い方変えただけやん!同じやん!

こーじ

言い方、大事。

こんなやりとりをしながら過ごす
幸せな1日だった。

 


次回 第8話 セカンドオピニオンをやってみる! ~準備編~