第5話 チーム医療のリーダーとは? 

〜相手中心の考え〜

【私とこーじの300日】

第5話 内容

🔴チームについて知る
🟡チーム医療初のミーティング
🔵 聞かされる”謎の数値”


【 チーム について知る】

チームって、何のチームですか?

Kさん

患者さんが中心となって、肝臓ガン専門の医師や、看護師、私みたいな相談医、あと食事専門の人、お薬専門の人、地域のサービスの専門の方とかで、チーム医療というものをやっているの。もちろん、家族のみなさんも一員よっ!

そんな、患者1人1人に?病院側が?やってくれるんですか•••?

Kさん

もちろんよ!ガン患者さんはそれぞれ、症状や悩みが違うからね、1人1人にあった医療を提供しないとね!もちろん、中心となる患者さんがリーダーよ!決めるのは、リーダーなの。みんなで支えあって、患者さんの事を考えるチームなの。

 

す•••すごぃ•••
そんな時代なんや•••

医療関係のみなさん•••すっごいな•••!
申し訳ないわ•••

えっ•••リーダーが•••こーじ!?
決定権が、こーじにあるよ、ってこと!?

 


今までは、
”お医者さん” ”看護師さん”
が一番偉い人、決定権を持つ人、という思い込みだった私。

 

わあ〜!それなら、本望やん!
えんじぇる通り越して、もう、〝神〟に見えるやん!

 

私の中で、〝病院〟が、
”なんか素晴らしい場所” に変わった瞬間だった。

チーム医療の打ち合わせが始まるので、
私はこーじのでっかい体を支え歩きしながら、打合せ部屋まで向かう。

 

集中治療室から出る事になって、
「検査までの部屋はどうしますか?」って聞かれたら、
「個室にしてください」って伝えるわな。

こーじ

ええのん?

もちろんや

(やった、言えた!心から言えた!)

 

こーじ

ふっ•••

 

こーじは、あまり大声でアッハハ!やったー!と笑うような人ではない。
めっちゃくちゃ嬉しいことがあっても、
「ふっ•••」と片方の口角を少し上げるだけ。

 

シャイなところがチャームポイントだった。

 

今まであんまり気づかなかったけど•••今はわかった。
喜んでるっぽかった。

•••たぶん。

 

【 チーム医療 初のミーティング】

Kさん

みなさん、集まってもらってありがとうございます。

Kさんが挨拶されてから、
少し緊張した空気が張り詰め、
私に説明してくれたように

〝チーム医療のリーダーは患者さんご本人!〟
という説明がされる。

 

こーじは、
〝僕なんや•••〟という表情で静かに説明を聞いていた。

 

私は考えた。
こーじが1番聞きたい事はなんやろう、
1番気にする事はなんやろう、と。

 

やっぱり自分の病状とか、
どのぐらいやばいのか、
いつまでもつのか、
退院することが出来るのか、とかかな•••

 

すると、こーじが発言した。

 

こーじ

先生、肝臓の数値とかって、結構上がってましたか•••?
それと•••僕はいつ退院出来そうですか?

 

私は驚いた。
〝かなりヤバいです〟って、集中治療室の看護師さんが言ってたし、
もしかしたら年内まで持たないのかも‥‥って思ってしまっていた。

 

退院する事を
真っ先に考えていたのか!

 

退院日を教えてくれって?
家に帰れること前提な発言やん!
心は強い方やったか!


それなら、そんなに嬉しい事はない…!

 

 

医師や看護師さんたちは、

肝臓のどこをどのように処置するか、
どんな薬が効きやすいか?
こーじの身体が持つかどうか…?

それを見極めるための検査をして、
その後に手術や治療などを始めて…

 


落ち着いてからの退院になりそうだと
(あくまで予定で)
段取りを説明してくれた。

2人とも少しホッとした。

でも理由はそれぞれ違った。

私は、
今すぐに緊急手術をするような事態では無いようなので、
ホッとしていた。

 

こーじは、
退院までの道のりが分かった事によって、
ホッとしているようだった。

 

【 ミーティングが終わり、聞かされる”謎の数値”】

その後、
2人で個室希望の旨を申し出て、
はじめてのチームミーティングが終わった。

わかりやすくて納得のいくものだった。

といっても、
まだ治療についての選択肢も決まっていない状況だった。

私はこーじが病室に帰った後、
Kさんと2人で話を続けた。

ところで、こーじが肝臓の何かの数値?を気にしてましたけど、
結局そうゆう数値を見る事、忘れてましたね•••

Kさん

そうだったわね、最初救急入口から来院された時の数値はコレよ。

 

何か検査結果のような紙を見せてくれた。

 

アルファベットで何か書かれていて、
肝臓の?何かの数値らしい。
ガンマ値とはまた違う、ピブカ?という見慣れない数値だった。

 

いち、じゅう、ひゃく、せん•••

ん?

じゅうにまん?•••を超えてるけど•••何の数かな?

桁がよくわからない。単位もわからない。

でも、横に書かれている〝平均数値〟には

「40」と書かれていた。

どゆことー!!?

Kさんはゆっくりうなずきながら、

Kさん

今朝の採血では、かなり減ってたのよ。

と、にっこり仰った。

 

私は思った。

平均数値からこんなに大きく外れた数値に、
集中治療室の方々も驚かれてあたりまえやん、
こんな数値出るんや•••!?って。
それで「ヤバいです」って答えたんや。そりゃそうやな•••。

今現在は数値が落ち着いてきているということを聞き、
(それでも40は余裕で超えていたけど)
ひとまずまだ一緒に居れるんだな、と感じた。


Kさんの笑顔が
さらに私を安心させてくれていた。


次回 第6話

検査の前の準備